土佐の平屋

「土佐の平屋」

敷地はビニルハウスの立ち並ぶ農業地域、100年以上の歴史ある柿畑に囲まれた場所にある。
敷地周辺を見回すと、広い空を切り取る低くなだらかな山の稜線、その下に無数に連なる切妻型のビニルハウス、低く腕を伸ばすように剪定された柿の木、などすべてが横へ横へと広がっていくような大らかさを感じる。
切妻型のビニルハウスや農機具小屋など周囲にあるモノの形態や素材を、クライアントの個別事由や住宅としての特性で変容させることにより、周囲に馴染むような住宅に出来ないかと考えた。
周囲にあるモノのなかに住宅に結びつくものがないか探すことから始まり、快適さの為にそれらを微調整し、実用から生まれたシンプルなディテールをなるべく崩さないようにシェルターとしての役割を与える。
それが農業を目的とした場所に住宅という異物をつくることの作法となれば嬉しい。

 

まわりの低く剪定された柿の木を切り取るように設定した低い軒を作る屋根架構は、枝のような細い部材を組み合わせ、ビニルハウスのようにシンプルな接合部をもつトラス構造としている。
切妻の断面形状も近接するビニルハウスの形状にあわせている。
土台は、鉄筋コンクリート製の基礎から半間跳ね出し、切妻型のボリュームが地上に浮いているような軽やかさを表現している。
同時に基礎の面積を小さくすることで掘削土量の縮小などコストコントロールに寄与している。
素材は周辺の農機具小屋などでも使用させる小波板(屋根)や、杉板下見板張り(外壁)とし、農地に建つ違和感をなるべく軽減するよう考慮している。


メロンやピーマンなど果菜類の栽培が盛んなこの地域では、一日をとおして日照がなるべく均一となるように切妻型のビニルハウスを南北方向に配置している。
その配置や形状をこの住宅でも踏襲することで、朝夕の光を深い軒下の開口部やハイサイド窓で取込み、南中時の強い光は屋根で遮る。
季節による太陽高度の変化には南東側の庇を構成する日射調整板で対応する。


設計概要

撮影:Koji Fujii/Nacása&Partners Inc.
 
用途:住宅
種別:木造平屋の新築
床面積:77.16㎡(23坪)
 

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